ノスタルジックな軽便鉄道の駅頭にて/石川敬大
 
 草のなかにレールをみつけた
 錆びた鉄の平行な二本線が
 弓なりに
 ここから延びていた
 または
 この草のなかで
 すっぱりと裁断されて尽きていた
 あおぐらい記憶の軽便鉄道の小さな駅頭で
 いつくるとも知れない列車を
 待っていたことがある
 いつのことだったろう、おぼえていないが
 でも、もしかしたら、それは
 読書体験か
 夢だったのかもしれない
     *
 あおぐらいホームの端の
 赤いシグナルが空にむかって点滅すると
 いつのころからか失っていた大切なオモチャの列車が
 ガシガシと白い煙をはきながらやってきて
 
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