ウイルスの夜/いとう
隣りでは君の咳が止まらずに
ウイルスが部屋中に降り積もって
負けじと僕も僕のウイルスを飛ばしながら
お互いのウイルスは僕らと同じように仲良くしてるのかなんて
そんなこと
どうでもいいよね
お互いダウンしちゃって
二人仲良く手をつないで
ベッドの中で
青息吐息
二人とも重症でね
高熱にやられちゃって
「おやすみなさい」なんて言ったら
別の意味に受け取られそうな
そんな切羽詰った状況なのに
でもそういうのがなんか嬉しかったり
でもそういうのがすごく幸せだったり
ヘンだよね
いや、ヘンじゃないか
部屋の中にはウイルス
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