春行き列車/朧月
 
ほんとはね
で始まる話しは
電車が通過する風にとぎれた

あれって枯れてるのかな
ホームの外側の木を指す

一瞬
春の景色がふたりを包むから
黙って乗り込む

同じむきにゆられて
じゃあねっていうまで待ってみる
君の告白

終わったことは といいかけて
アナウンスにまた黙る
沈黙は やはり正しい

花びらみたいな桃色の
少女が立っていた
入り口付近の空気だけが
三月の風だった


戻る   Point(6)