わずらひて/青井とり
 

はらはらと
時雨る皐月の
けしなるは
うきわれぞ泣く
情けにやあらむ

あやにくや
さうなき人の
情けなき
果つれば果てぬ
袖ぞ干ざらん




五月だというのに時雨れているだなんて。
苦しい私の心を察して、共に泣いてくれる空の温情だろうか。

(空までも悲しんでくれるというのに)酷いのは、私を残して死んでゆくあの人の無情さだ。
彼の命が果てれば、私の涙が止まることもないし、袖が乾くこともないだろうよ。
戻る   Point(1)