断片レター/かんな
 
どこまでも黒い、
夜空を見上げる理由を知っている
星が瞬く、その時を想像して
たおやかな時の巡りを
歴史のつよい鼓動を感じる
その真下で、
君に告げたい



生きていく上で必要なこと
君があげつらねていたほど、多くはないんだ。
その意味をかみしめているだけで
しあわせという味は感じるかもしれない。

断片的なおもいは、
やさしさに少し形が似てくるからと言うと
君は不満そうにして
やさしさには形がないことを主張したよね。

思うんだ。
生れ落ちて、この地で。
不必要なものほど、必死で抱きしめていなきゃいけない。
それが生きるってことだと、
君にいつか言い返そうと思っていたよ。



どこまでも白い、
雪の丘を駆け上がる理由を知っている
命が一呼吸するその間
しとやかに芽吹く幼い春は
ほんとうに昔の小さな恋に似ている



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