いくつかの影/ねことら
 



罵倒してもよかったんだよ
ボディソープの淡いにおいのぬけがら
輪郭だけ纏おうとしても
乾いた夜に、まぎれて消えた



皺の寄ったシーツと
その影の濃淡
なにかに傷つきたがって、いたね
ぼくらは
たよりないルームライトのしたで
おぼろげなひょうじょうで
かすかに、わらって



閉じる円環、その尾を
手をつないで見送っていたね
いつまでも撮りつづけられる
一枚の写真のように
悼みながら



すこしずつ白みはじめるリビング
透明なグラスの縁ににじんだ
よわい苦みに、そっと舌を這わせて



何度、呼吸をやめようとしても
苦しみが刺すだけだから
きみに、赦される朝が
訪れることは、もうない









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