ミツバチのアルツハイマー/和田カマリ
 
どんよりとした空
気分が優れない
早くワイパックスを飲んで
寝てしまいたいけれど
まだ仕事中なのでそれも叶わない

無個性なビルに囲まれた
谷川のような道を
僕の乗る営業車が
押し流されて行く

困ったことに
どこに向かっているのか
全然わからない
思い出せないのだ

会社に電話して
「僕どこへ行くの?」と
チームのOLに聞いてみようか

いやいやダメだ
変な人に思われてしまう
もうこれ以上軽蔑されるのは嫌だ

今は標識の矢印だけが頼り
とにかくまっすぐに行こう
そのうち思い出すかもしれない

たまに
神 戸 とか
京 都 とか
形が見
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