フィルム1/六崎杏介
 
 死化粧

「不安で。淫しよ、ん」
途端の爆発は火霊の出産
炎上の寝具上に響く朱はきませり
灰の増す空目につもり
血-苦痛が頬を染める
朽ち辺に最後の吐息が消えた。


 降る鬱

禍日、火重力落つ前夜
蛾、列記した瓦礫の下の
恋を椅子に運んでいく
林檎の樹にロープ
先端はRing-O
夢論から覚めた男
慰稚児を抱いて火気に怯える
「呉れ慰撫、この場名々死に」
夜明け迄千℃を保つ火重力の
薄明かりが照らす林檎に聞く惰
喪の男は眠れない。


 血とブルジョア

空一面の万月の夜語り
ムスク焚きし意
どうか!は同価の銅貨3枚
少女の知る苦、初と捨て
月に属さぬ血黒く、痴宴に凍ると
万月墜て全て押しつぶした
それは銀貨の山だった。
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