雪が隠す/和田カマリ
降りしきる雪が街を隠す
遠景を有耶無耶にする
私に残されたのは
鉄塔の太い骨組みと
幾筋かの高圧電線
切れ目も曖昧に天国へと続く
薄墨に浸された無数の紙吹雪
街の汚れを清める事もできず
幾重にも覆い隠して行く
周期的に発光する空
そのたびに近づく夜
ただどれだけ暗くなっても
この雪の日の幽かなグレイは
私の網膜から消えはしない
そしてその
沈黙の更に奥には
忘れていた紫色が埋もれ
静かに燃え続けている
あの日
指を絡ませて
窓の外に
降る雪を感じながら
蛹化した私と女の
息のような
嘘のような
思い出のような
紫
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