暗闇の中/寒雪
 


月から吐き出される
柔らかな光の束さえ
拒絶して佇む暗闇の中
ぼくときみは息を押し殺して
その場にじっとうずくまる
暗闇というからには
ふたの開いた墨汁を
半紙にぶちまけたくらい
黒くて微かな色彩さえ
抱え込んで見えなくする


近くにいるのか
離れているのか
静寂が音という音を
夢を食べるバクみたいに
端から端まで
食べてしまっている
ぼくの体の中で
組曲を奏でる鼓動のオーケストラ
海に沈んだ呼吸のカルテット
骨や肉に跳ね返って
脳みそを振動して
やってくる音たちだけが
ぼくに届く
宇宙に放り出されてる
無数の小惑星はこんな気分なのか
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