まばたき/松本 涼
 
雨を吸った土の匂いの中に
小さな足音は染み込んで消え

痩せた川の澱みで回転する
小枝に自身を重ねている


どこでもないその場所で
世界はゆっくりと
瞬きをしていた


見上げれば黄色になった葉が
まるでそれに合わせるように
次から次へと舞い落ちる


誰かの手を握ることに
何の躊躇いもなく居たのは
いつのことだったろう



戻る   Point(4)