雪/真島正人
 
 もう共感しなくなった年月が
 物干し台にほされてる
 夜になれなかったやみが
 陽だまりで喘いでる
 でも生きる方法なんて
 なくならないのだと
 笑ってる

 昔言ったことのある言葉が
 小川に産卵してる
 学校を卒業した子供が
 硬くなりはじめた髪と
 友達になろうとしてる
 中華丼を注文したら
 小銭が返ってきた
 硬貨は
 柔らかくならない

 あの娘が
 洗面器の前で
 ゆり戻しを
 体験している
 いくら流しても涙は
 なくなったりしない
 きらめいている太陽の光と反して
 部屋の中は暗い
 ここはどこですかと
 問いかける男の
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