さかあがり/小川 葉
 


たしか死んだはずの父が
逆上がりをしている
たしかに死んだはずなのに
まるで昨日のことのように見える
うまくできないのだろう
年老いたからだでは
それでも負けず嫌いの父に
もっと腕を引きつけて、と
アドバイスしたけれど
遺影の向こうまで声が届かない
届かない、といっても
叫ばざるを得なかった
親孝行のしかたがわからない
わからなくても
叫ばざるを得なかった
その気持ちさえあれば
できるような気がした
逆上がりをあきらめて父が笑う
おまえならできるはずだと
遺影の向こうでやさしく笑う


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