波が洗う嘘/朧月
 
正直に生きるなんて
そんな恐ろしいことできないよ
正直になんてずっと
幼いころからできなかったよ

右といえば左であったし
上といえば下であったし
どちらでもいいといえば
はっきりしなければならなかった

嘘になってしまったって方が
ほんとうを目指すよりいいと
やみくもに走ってみたよ
闇になんてぶつからないよ

君がそこにいるのかいないのか
考えるだけで窒息しそう
空の有限説なんてどうでもいいから
空の見える範囲にいたいんだ

嘘を書いた砂浜を
波が洗ってゆくよ
生きるってその程度のことだと
笑ってよ僕の目の前で


戻る   Point(3)