波が洗う嘘/朧月
正直に生きるなんて
そんな恐ろしいことできないよ
正直になんてずっと
幼いころからできなかったよ
右といえば左であったし
上といえば下であったし
どちらでもいいといえば
はっきりしなければならなかった
嘘になってしまったって方が
ほんとうを目指すよりいいと
やみくもに走ってみたよ
闇になんてぶつからないよ
君がそこにいるのかいないのか
考えるだけで窒息しそう
空の有限説なんてどうでもいいから
空の見える範囲にいたいんだ
嘘を書いた砂浜を
波が洗ってゆくよ
生きるってその程度のことだと
笑ってよ僕の目の前で
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