息遣い/乱太郎
唇を重ねたように
息がつまりそうな真夜中
声を荒げて
逃げだしそうになる都会の真ん中で
小さな羽虫たちは
か細い灯りに寄り添い
汗臭い涎を垂れ流している
相槌のない会話が延々と続き
夜の皮を剥ごうと
必死に両手をばたついて見せるが
誰も本当は望んでもいない
小指で差し出してくれる薬があればいいと
脈拍が踊る
息遣いが荒いのは
誰のせいでもないのは分かっている
ここはアウシュビッツでもないし
アルカトラズでもない
それでも
ここから出ようとしないのは
圧迫感が恍惚になって
もしかしたら
真珠の夢を拾うことが出来るかもと
小さな羽虫たち
息遣いが夜を灯す
戻る 編 削 Point(15)