息遣い/乱太郎
 

唇を重ねたように
息がつまりそうな真夜中
声を荒げて
逃げだしそうになる都会の真ん中で
小さな羽虫たちは
か細い灯りに寄り添い
汗臭い涎を垂れ流している

相槌のない会話が延々と続き
夜の皮を剥ごうと
必死に両手をばたついて見せるが
誰も本当は望んでもいない
小指で差し出してくれる薬があればいいと

脈拍が踊る

息遣いが荒いのは
誰のせいでもないのは分かっている
ここはアウシュビッツでもないし
アルカトラズでもない
それでも
ここから出ようとしないのは

圧迫感が恍惚になって
もしかしたら
真珠の夢を拾うことが出来るかもと

小さな羽虫たち
息遣いが夜を灯す

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