理由/城之崎二手次郎
気持ちをうまく言えないことを悔しく思っていた。
先日、久しぶりに池波作品を読んだ。「夜明けの星」という小説だ。その中に、こんな台詞があった。
「口に出しては、うまくいえませんし、いってしまっては味気ないように思いますけれど……」
――そうか。
うまく言えないときは、うまく言えないと言えばいいのだ。なんだか心が軽くなった気がした。
池波作品には僕好みの台詞がたくさんある。だから好きだ。
二手次郎の勝手企画。
「原稿用紙一枚半でエッセイを書いてみよう」より。
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