理由/城之崎二手次郎
――やっぱりおもしろい。
池波正太郎の小説を読むと、いつもそう思う。
最初に読んだのは「鬼平犯科帳」だ。大学に入ったばかりの頃、テレビ放送を見て読んでみようと思った。これがおもしろかった。
それから七年。百冊近くの池波作品を読んできたが、どれもおもしろかった。
池波正太郎にハズレなし。これが持論だ。
どうしてこんなに好きなのかと考えたことがある。
剣客同士の攻防は一瞬。その速さは爽快だ。登場人物のユーモアある言動には笑ってしまう。敵役の人生もしっかりと描かれており、時には主役と同じくらいの魅力を感じる。
こうして言葉にしてみるものの、どうにもしっくりこなかった。自分の気持
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