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瀬崎 虎彦
真実らしさを裏表縫い合わせながら
花のこだまする落下音
見渡す限り白と灰色とクリーム色
名状しがたいこの光景は夢がない
小さく震えながら露を受けて輝く
幻が咲いて木の幹を下る午前に
手に手をとるように水分子が
山間の村を静けさに綴じる
まだ朝の気配がここそこに残る
水の下の記憶では
夏のままでいればよかった
もう季節を肌に感ずることなく
ひとびとの日々の生業を
水面に映る喜びとして聴いている
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