たった一晩のことだった/竜門勇気
君がいるから
生まれたんだ
ただそれだけで意味はない
初めの大きな音に
次が小さくこたえた
揺れは少しずつ重なって
笑い声のように止まった
ぜんぶ一度に
わかってしまった
ぜんぶをすでに
知っていた
ありのままは見えていなかった
未来をみてしまった
そして帰ってきたんだ
君が呼んだから
未来をみてしまった
僕に会ってきた
僕は君を好きだった
寒い冬を歩いた
のどの奥の氷が
さらさらに乾いていた
二日目の夜に気づいた
僕は君を好きだった
光が夜にあふれた
流れる星の尻尾が
ぐるぐる回る傷に
重なって笑って止まった
深い傷の向こうで
誰かが待ってる
流れる星の下で
意味のない夜を歩いてる
ぐるぐる回る世界を
止める意味はない
僕の歩く意味もない
ただ君に会えればいいと思って歩いた
理由が夜を削った
いつの間にか光があふれた
二日目の夜に気づいた
たった一晩のことだった
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