焚き火/松本 卓也
一日、心から出なかった声を
全て集めて並べてみたとして
どれだけの意味が成るのだろう
パソコンに資料を打ち込みながら
屋上で煙草を咥えながら
昼飯を買いにいく道すがら
咳に咽んで泣きながら
時はただ過程を積み上げつつ
結果だけを導いていくもの
独り言と成って零れた音
胸の内で消え去った言葉
大切に繰り返してみようとしても
振り返れば十分前に思ったことさえ
はっきりと思い出せないのに
居場所を探せない寒風の中
足元、枯れ積もる木の葉を
クシャクシャと踏み潰していく
消えた声の成れの果てが
最後に聞かせてくれたのは
か細く乾いた断末魔
無駄に響かせてみたところで
やがて風に紛れて消えるのならば
せめて記憶の片隅に積もれよ
残骸となった言の葉でさえ
妄想の炎を灯せたら
隙間だらけの裏腹も
少しくらいは温もるはずさ
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