知るということ/salco
況を
刻々と近づく敗北の無念を嘗め尽くせ
それが人の帰結点だ
意思が欲が哀願が一切通用せぬ白旗の上で
踏みしだかれ唯、連れ去られる時を待つ
その衰弱は人生の何よりも厳粛だ
死が有機物の定めであるように
自死は動かし難く人間の権利だ
だからそうして消えるのもいい
だがおのれの生を知悉した気でいるなら、それはお笑い草
第4期の激痛を、心筋や脳組織壊滅の衝撃を味わえ
全き無力の身となって孤立無援に剥がれて行け
尾根に突き刺さるJAL機の1秒間を見て行け
ガス室へ続く行列で児童が仰ぐ空を知って行け
これが生ある者の絶望だ
死にたいとほざくなら、それだけを楽しみに
何もかもと手を切らされ、唯一人消去される威力を楽しみに
せいぜい生きるがいい
つまらぬ自我の円環をでなく、断崖の突端へと足枷を曳け
選択の余地が微塵も無い、その白い病床こそが死へ至る階梯
生の秘蹟だ
臨終は、お前の質量が量られる唯一の時
存在の総括であればこそ
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