夜明け/天野茂典
でいる。日本一透明度のある川としても有名だ。ぼくは車で遡ったが息苦しいくらい春爛漫だった。逃げ出したくなった。美しいものの下では気が触れるのだ。ぼくの心の羅針盤が狂うのだ。ジョン万次郎が救いだった。川から海へ。さらに遠くへ。ぼくの欲望は耐えない。枯葉のように太平洋を漂流した万次郎。アメリカ社会へ適応した万次郎.彼でさえ船底で腐乱していたかもしれないのだ。川面から魚影が見える四万十川。頭の中が透き通った万次郎。四国高知は播磨矢橋や桂浜嶽ではなかった。ここから坂本龍馬が出奔するのだ。
夜明けは辺境からやってくる。
パラダイム変換。
近代日本の夜明け。
ぼくは夜明けが待てない。
2004・10・31
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