薔薇は何処に行った/kauzak
薔薇は何処に行ったのだろう
もう何年も目にしていない
気が
するんだ
僕の住む街は
かつてバラの街を標ぼうしていた街の
隣にある
だからと言って
薔薇を植えた庭のある家が
そこここにあるとは限らないけれど
幼い頃
薔薇の硬い棘のある茎に触れたときの
柔らかな痛みが好きだった
それは
表面を撫でるだけの痛み
傷付くことを知らなかったから
未来が眩しすぎて見えなかったから
切実ではなかったのだ
傷は癒すことしかできないことを知って
僕は憶病になった
薔薇を探すこともできなくなった
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