雪女になる/千月 話子
冷たい水で顔を洗うの
指先に赤く血の色滲んで
朝に凍り付く体
包んでも 包んでも
冷たく表層になるばかり
誰か 誰か
隣で眠ってはくれませんか
心安らかな人よ
無音のはずの まばたきが
キシキシと軋むなんて
どうかしてる 白々しい朝
隣で眠る人よ
あなたの羽毛の下は
春の柔らかい日差しの中で
浮遊する小鳥の白い綿毛に
満ちて 満ち足りて
暖かに微笑んでいるのですね
もう だいぶ霜の降りた
私の白い指先で
上気した その頬に触れたい
今なら まだ
あなたが粉々に散って 消えて
見えなくなってしまっても
また新しい お人を
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