彫刻刀が刺さったままの雲の下で/
 


空が削られる
パラパラと降ってくる削りかすは
鉛筆のそれに似ている
積もることもなく
街の音を少しだけ消していく

人々は傘をさす
溶けていく空の断片を吸って
傘は成長を続ける
誰も見えなくなって
誰もが安堵し 白い息を吐く

傘を持たない人々は
彫刻刀が刺さったままの雲の下で
色とりどりの雨が降るのを待つ


どんな時も
黒の絵の具を使ってはいけなかった





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