あなたは激しい加速を/乾 加津也
あなたは激しい加速をとり違えた氷のように歩いていた
わたしの喪失は人混みにもまれていよいよ遠のいていた
あなたの鈴のような耳のひらき
わたしはわたしのせいで気がふれてしまいたかった
“わたしの知らない、あなたを灯す”
引きちぎられた
黒いボタンの色褪せがゆっくりとはじまっている
すでに ことばに触れたものなら
にどとは死ねない戦域に
“いつまで氷を、生きますか”
あなたの俯いた口元からわたしの不在を閉めださないでほしい
記憶の侵食が古巣をさがせとおおいかぶさる
狼の
支配のやいばをふりはらい いちど
吹雪にむきなおる わずかな
眼光
おぼえてはじめて追放をしる
けだるい朝に夢はころがり
砕け散ると
黒いボタンは部屋中に香った
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