長編詩 成人の日に寄せて(抄)/salco
る者の絶叫は誰にも聞こえない
何故なら老人は叫ばない
溜め息だけ
肺に滞るそれさえ吐く余力があるのか怪しいものだ
横隔膜も声帯も聴覚も衰え、いくぶん萎縮した脳も
すっかり樟脳臭くなった髄液にひたされている
一方、
熱く火照ったミサイルの如き青少年が
経験的敗北主義者の老人と違うのは
成人並みの膂力以外は全く非力で孤立無援という点だ
いかなる権限も許されておらず
無きに等しい権利は大人の管理下を逃れ得ない
憲法第十三条が何だと言うのだ?
行政は納税者の味方だ、どう足掻こうが
どちらが正義で誰が支持されるのかをそれは示している
身長はとうに親を越しながら、何をしようと
変わらず幼稚園児として扱われるようなものだ
後の物語なら君自身が詳しいだろう
さて、
誇り高き自我の一人舞台は終わった
予定調和と拘泥の煉獄へようこそ!
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