再会の鍵/寒雪
昨日
音もなく降り積もる積雪と同じくらい
静かに息を引き取った
きみの死体を前に
ぼくの口元から漏れる呼吸の音だけが
雑踏の騒々しさを伴って
ぼくの耳に聞こえてくる
死んでいることを除けば
ただ目を閉じているだけのきみを
受け入れることが出来なくて
きみの頬に手を伸ばしてみる
触れた指先から伝わる
魂を奪う死神の冷酷さにも似た
冷たくなったきみの心
きみが必要だと思っていたのは
ぼくが一番だと思っていた
だけど
ぼくの搾り出した思いや
切り刻まれた祈りは
神様の欲望には何一つ敵わず
きみは天国に連行されてしまった
いまさらだけどきみのことを
深く強く思い直している
無駄な努力だとわかってはいる
悲しいことだけれど
きみはぼくより必要な誰かのために
次のステージに進んだんだね
もしそうだと言うのなら
きみはそこでぼくのことを
必要だと強く念じていてほしい
ぼくがいずれそこに向かう時の
暗闇を照らす松明になるために
道がわからない時の道標になるために
もし本当にそばにいけるのなら
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