友達/小川 葉
 


道端に人が横たわっている
居眠り運転の自動車がやってきて
定刻通りに轢き逃げしようとしている
その間にも私には守るべき家族がある
見なければ見ないことに出来たその人にも
同じくらいの家族や自分の命がある
むっくりと起き上がり
何もなかったかのように
その場を立ち去ったのは
道端に横たわっていた人なのか
その人を見ていた私なのか
いずれにしても
私は君のためにしてあげることは
何もなかった
はじめからそうだったのか
何か理由があって
そう言うしかなかったのか
人が壊れる音を聞きながら
こんなに小さな世界で
せめて君が友達だったなら
祈ることもできたのに
と願う


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