遠ざかる/
 
空が黄色いよ
と彼女が言う
見上げると
私たちが信じている
「いつもの青い空」が広がっている

けれど
わかる気がするのだ
今 確かに彼女の空には
黄色いカーテンが覆いかぶさっていて
何だかよくわからないものが
今にも降ってこようとしている
それは毎日の不安と同じように
きっとどこまでも追いかけてくるだろう


守るために
もう一度空を見上げる
同じものを見ようと目を凝らす
そしてすぐにそらす
その青さを直視することができずに


+


「気のせいだったみたい」
と声がして
小走りの足音が遠ざかる
追いかける事も出来ずに
その姿を目だけで追う
いつもとは違う色をしたその背中を じっと見つめる 






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