かえりみち/あぐり
 



つつがない日々の帰り道で風が止む

あのひとがいなくなったらわたし、
どんな顔して ここを歩くの

それ以外
変わりようもない流れの中で
緑のフェンスにすがろうとしている
中身のない影が
ずっとずっとずっと 先までのびていくのを見つめている


夕暮れは例えば
黄金糖の先端のようだった
頬の内側を傷付けながら
ともだちはわらいあってさよならをした


わたしがいなくなったらあのひとは
どんな顔をしてここを歩くの

みたことのないそのかすかな表面に
触れる空は、やさしいだろうか

靴をそろえたまま
カーテンは何を頼りに泣いていたんだろう
こまやかに移ろうその先を
ジャムの瓶の底から掴もうとしている

隙間をむさぼると
たしかなわたしの味がした



戻る   Point(3)