居場所/殿岡秀秋
 
友達とビールを飲む
突然そこにいるのがいやになる
話していて楽しかったけれど
話題がぼくからそれると
組になって話す人達のなかで
ぼくだけ話し相手がなくなり
夜空に
七分咲きの花の群の
まだ堅いつぼみのように
取り残された
桜の幹に洞穴がひらいて
ぼくを呼ぶ黒い声が
響いてくる
この場をはなれて独りになりたい
そうすれば
ぼくを空想でなぐさめることができる

仕事場で会議をしている
頭はいそがしく
いろいろな意見の重さを量る
人を傷つけないように
それでいてぼくの意見を通すために
どうしたらいいか
かんがえながら
ときおりあいづちをうったり
大して
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