悲しみの記憶/寒雪
 


きみを失った悲しみは
繰り返し緩やかに昇る太陽のようで
朝焼けに照らし出された街の
塗り潰された悲しみを
毎日毎日目の当たりにするたび
ぼくの心も
悲しみに染められていく


きみを失った悲しみは
月に導かれた潮の満ち引きのようで
入江の岩肌が
悲しみの波に濡れて
ゆっくりと沈んでいくのを見るたび
ぼくの心も
悲しみに満ち溢れていく


悲しみが掘った穴の大きさに
何度もきみを忘れようと
穴を埋めようとしてみたけど
出来なかったのは
悲しみと同じくらい
きみと作り上げてきた思い出の
存在が輝いてぼくの心を
暖めてくれていたから


きみを消し去ってしまいたくないから
ぼくは傷ついた心をあえて
大切に抱えて生きていく
傷口が疼く度に辛い悲しみと共に
きみのことを思い出す
それはきみが確かにこの世にいた証
だから
きみの前に現れた時は笑顔で
いつでも迎えてほしい
いつまでもきみを忘れさせはしない

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