「視線」/ベンジャミン
だ強く焼きついた視線の記憶を
ゆらゆらと浮かんでゆく気泡に閉じ込めて
※
今の私が唯一できることと言えば
それらすべての視線から眼をそらさずに
しっかりと見つめて焼きつけること
ほんのときどき
きっと誰もがそうなのだろうが
子猫を抱き上げるような眼差しに出会って
その束の間に救われたいのかもしれない
たとえ千の刃に貫かれても
一度のやわらかな眼差しに出会えるなら
私はうつむかずにいられるだろう
そしてその一瞬を始まりにして
私の静止した時間から動き出せるだろうから
私はこの街の小さな曲がり角に立つ
そのとき私の視線が
誰かにとっての刃にならないように
私はときおり空を見る
青い空に白い雲は
単調な音楽のように静かに流れる
私にはそれが必要なのだ
私は私の視線に怯えてはいけない
そのために空を見る
ただ青いだけではない空に
私は何を見ているのか知らない
けれどそのとき
叶うなら私の眼差しが
やわらかであれば良いと願う
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