日常的な公園/リンネ
Kは鬼ごっこをしているが、妙なことに、およそ鬼と呼べるような人間がどこにも見当たらないのである。そういって悪ければ、Kはすっかり鬼の顔を忘れてしまったのであった。
ベンチの裏に丸くなって隠れてはいるが、はたして鬼がだれかも分からない状況で、どうしてこれが隠れているといえるのか。実際、向こうのジャングルジムの近くで煙草をくわえている長身の男から、Kの姿は筒抜けであるし、いうまでもなく、このベンチに座っている男の子と老人には、とうに気づかれているはずである。それに、あの女、砂場でしゃがみこんで猫と遊んではいるが、さっきからこちらのほうを横目を流してうかがっているようなのだ。それから、その女の大き
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