日常の隙間/うたひと
 

ビル街の四角い空
冷たい秋の雨
地下街の雑踏は雑音のように鼓膜に響き
左脳は一人の足音と2人のささやきを聞き分けていた
すれ違う人達の肩が触れあった
皮膚はぶつかったと感じ
左脳は血の通った人として
温もりが触れ合ったと感じていた

冷たい秋の雨が止んだ
太陽の光を求めるように地下から地上へ這い出る
雨と晴れの境目に虹がかかる
虹を追いかけてもたどり着けない事を知っている人は
虹を追いかけようとはしない
右脳は虹を追いかけようとはしない
左脳は虹を追いかけようとしている

衝動にかられ虹を追いかけた
海が見えてきた頃には
冷たい秋の風が吹いて
虹は消えていた

宇宙を見るように
空を見上げた

高い空
空と宇宙空間の境目
深い青
空の青と海の青が地平で溶け合う
見えない風
風は木の葉を揺らし海面に紋を刻み その姿を想像させる
雲の質量
重力に縛られないシロナガスクジラの白い雲が
どこからともなくただよい過ぎていく

その時ふと思ったんだ
僕たちはいったいどこから来てどこへ行くんだろうって
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