準備/寒雪
 


冬の寒さに
地肌が荒れてしまって
無精ひげだらけになった
荒涼とした大地に立って
寒空の下
何かに追い立てられ
右から左へと駆け抜けていく
凛としたつむじ風を見ている
留まることを知らず
目的地を求めて走る風の
潔さを自らの物にしようと
コートを脱ぎ捨て
彼らの行列に身を投げる


季節外れに日焼けした
きめの細かい肌を持った
砂浜に立って
冬の寒さに白い泡を口から吹き出して
愚痴を言いながら前後に
行進を続ける波を見ている
月に導かれて揺れる
寄せては返す波の
運命に翻弄される悲しさを
心の砦に取り入れようと
コートを脱ぎ捨て
彼らの輪の中に身を任せる


目の奥を睥睨する視線に耐えながら
悠然と昇り行く朝焼けの太陽に
全身を照らし出されて
これから始まる未来を
心の奥底に受け止める覚悟を
悲しみにくれる雲が
涙を零して自らの周りが
暗く照らされたのだとしても
それを脳裏に捕らえることで
運命の歯車は軋みながら回るだろう
動き出した自分を恐れず
すべてを受け入れる準備は出来ている

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