ペンキを塗る/寒雪
季節外れの
予想外な大嵐が通り過ぎた朝
家の周りを取り囲む
防護壁の剥げてしまった隙間を
シンナーくさいペンキを片手に修繕する
今度の嵐はなかなかに強かったようで
思いの外あちらこちらに
ペンキが剥げて中が見える箇所が
素人丸出しでゆっくりとペンキを塗る
これで何度目になるんだろうか
よく見ると前に塗ったペンキが目に付く
その色に前の嵐が壁に施していった
悲しみの傷跡がくっきりとわかる
今度嵐がやってきても
出来るだけ何事もなく済ませられるよう
心持ち分厚くペンキを塗る
けれどもたぶん
次また嵐が荒らしまわった後には
たくさんの傷が出来てしまうのだろう
それをまたペンキで補修する
いつまでたっても終わることのない
繰り返し演じられる舞台劇のようで
舞台に立つ自分を思い浮かべて
苦笑いしながらも明日に備えて
ぼくはやっぱりペンキを塗るのだ
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