テディベアになりたい/光井 新
テディベアになりたい。そこにいるだけで、なんの役にも立たないような、そういうものに、なりたいと思う。
どんな事が起きても、動じず、無表情で、ぼんやりと、花柄の壁紙を眺めていたい。そんな風に、何年も、何十年も、変わりゆく街を背に、窓辺にただ座って過ごしたい。
時には洗濯バサミで吊るされ、いつかはきっとゴミ箱に捨てられてしまう。それでも、大切な友達が泣いている夜には、優しい言葉をかけてあげたくて、人間になりたいと願わずにはいられない、月明かりの下のテディベアになりたい。
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