さようならのうた/
朧月
山の中の切り株
風で倒れた木は切られ
まるで抜けた歯のよに
風が通るよ
私はそこに座り
下を見下ろしていた
彼が落ちて行ったのは
この場所からだった
偶然という言葉で
かたずけられはしたが
同じヘルメットの上司は泣いた
人なんて簡単だ
崖の上と下では
まるで別の個体になって
だれもが彼の姿を
見送る 涙の中で
切り株は体温だけを
受け取ってうたった
彼のすきだった少し
悲しいメロディ
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