輪唱/うめぜき
守唄がやんややんやと歌い出し
締め付けられてくる、のだった
愛する人が去っていってから
私はただ手がつなぎたかった
私はただ眠る時、抱きしめあいたかった
だけだと思った
その時には
お互いの子守唄の膜を破ろうと一生懸命に祈りあって
時々は子守唄が輪唱になったりするから
微笑みあう、のだった
ぼんやりと街の様子を見つめていると
風の強さが一段と際立っていて
何処かの窓辺から漏れた子守唄が
かすかに聞こえてきた
私は愛する人のことを思い出すにも
どんな音程だったか、どんな情感だったか
忘れてしまっているのだけれど
忘れてしまっているのだけれど
風が運んでくるいくつもの子守唄が
まるで私と愛した人が奏でたような輪唱に聞こえて
私は思わず微笑みかけてしまう
のだった
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