輪唱/うめぜき
 

どんな人にも子守唄が取り巻いている
毛穴の一つひとつから歌がこぼれて
体の周りに薄い膜を作るのだった
愛する人の体に進入しても
私は膜の外側にやはり弾かれてしまって
一生懸命に聞こえてくる子守唄に合わせて歌うのだけれど
細かい音程やら情感やらが違って
愛する人には進入出来ないまま
私は朽ちていくのだなあ
そう思うと呼吸が浅くなってぼんやりとする、のだった

愛する人がある日言うには
私の中に入りたいのに
「あなたには薄い膜があって私は入れないの」
ということなのだ
そこで気づいてしまったのだが
私は私の膜の外には出られないのである
突き破ろうとすると
子守唄
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