花火ちゃん/せかいのせなか
 

今から書こう
とおもっているとき
なるべくほかの文字が目にはいらないようにする
靴下は左からはく
熱いものを食べるまえに
まずその熱さにびっくりする想像をしてから口にはこぶ
ピアスは許せるけどイヤリングは許せない
だって一生いっしょにいてやるみたいな覚悟がかんじられない

花火ちゃんと
そんなことをしゃべりながら
コーヒーを二杯飲んだ
不安や憂うつはだいたい目分量できりとるにかぎる

午後をすぎた表通りの
石畳にひかりが跳ねてゆらゆらおどり
ああいうのスペイン語かなにかで天使の鬼ごっこっていうんだよ
おしぼりをきれいにたたみながら花火ちゃんが言った

わたしは
そんなことばあったかなあ
とおもいながら
首をかしげて窓の外へ見入った

ほそめた瞼のすきまで
ひかりが海みたくとおくおもえた




 
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