心の距離/寒雪
 


ぼくたちはその日も
西日が差す
四畳半の狭い部屋で
互いの心を確かめようと
見えない体を貪り合う


毎日のように
きみの乳房の位置を想像しながら
ぼくの陰茎の長さを期待しながら
ぼくたちは互いを愛撫する
太陽の動きでかろうじて
時の移ろいを肌で感じる
ぼくたちの長さを
意識すればするほど
ぼくたちはそこにあるはずの
肉体への距離の遠さに
苛立ちを感じて
きみの中でぼくは暴れる


月がいつの間にか
部屋を覗き見していた
青白い光を横顔に携え
ぼくたちは互いの顔を見つめ
頬に手を添えようとするけど
心が肉体を置いて
ぼくたちのそばからいなくなる
そんな冷たい体温を感じて
抱きしめる互いの体は
時差を感じるほど遠くに


いつまでも近づくことのない
ぼくたちはそれでも
幻想を信じて
布団を分け合って
TVを見つめるしか出来ないのだ

戻る   Point(1)