雲の箱舟/服部 剛
 
せた 
雲の箱舟が 
青空の海原を何処までもゆく 
夢を見る 
( おうい、雲よ ) 
と呼ぶほどに 
ゆっくり早く遠のいてゆく 
あの雲は 
大空に包まれた一点として 
心配事すら 
忘れてしまっているようだ 
目を覚まし、身を起こし 
古の本を開けば 
薄茶けた頁には 
新しいアダムとイヴの物語 
あの日、赤い知恵の実を食べて 
楽園を追放されたふたりが 
ふたたび手を取りあい 
すでに歩み始めていた 
遠くに小さく光る「いのちの門」へ 
 ※ 7連目の( )内は、山村暮鳥の詩より引用しました。 
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