ばあちゃんを乗せて/オイタル
 
ばあちゃんを乗せて
じいちゃんを見舞いに行く

ゆく道の傍らに
塀越しの柿の実が鈴生りだ
ひとつぶずつに
千年と千日の
日差しがはね返る

 小太りの猫が座ってたじゃないか
 毛の禿げた 灰かぶりのさ
 日よけの長い簀の陰に
 まあるくねえ
 背筋を伸ばして ねえ
 りんと顔を
 あげちゃって
 いいおとこ
 なんて言っちゃって

猫の視線の先に
横倒しの自転車の子供が
細長い影の溜まりを作っていた
影に薄い影を重ねて
もうひとつさらに重ねて
それから
起き上がってきた
昨日の向きに進んでいようが
明日の向きに曲がっていようが

 ちょっと
[次のページ]
戻る   Point(5)