ばあちゃんを乗せて/オイタル
ばあちゃんを乗せて
じいちゃんを見舞いに行く
ゆく道の傍らに
塀越しの柿の実が鈴生りだ
ひとつぶずつに
千年と千日の
日差しがはね返る
小太りの猫が座ってたじゃないか
毛の禿げた 灰かぶりのさ
日よけの長い簀の陰に
まあるくねえ
背筋を伸ばして ねえ
りんと顔を
あげちゃって
いいおとこ
なんて言っちゃって
猫の視線の先に
横倒しの自転車の子供が
細長い影の溜まりを作っていた
影に薄い影を重ねて
もうひとつさらに重ねて
それから
起き上がってきた
昨日の向きに進んでいようが
明日の向きに曲がっていようが
ちょっと
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