消極的前進/寒雪
 


ぼくの背後で
どれくらいの回数を
太陽と月が交互に
未だに頼りげな
ぼくの背中を
照らし出していったのか
両手の指では数えられない
ただ背後に映る
太陽の情熱と
月光の沈着を
前頭葉で感じぼくは
不安定に歪む地面の
にじり寄る顔面を踏みしめる
時々
硬くなった足を慰めようと
振り返って
これまで通ってきた足跡の
自己存在証明の叫びに
耳を澄ましてみる
整然と聞こえてくるのではなく
校長先生のくだらないお説教を
仕方なく聴いている生徒が
周囲に垂れ流す無駄話の
雑然としたノイズの塊が
ぼくに襲い掛かる
その時初めて
ぼくは自分が何者であるか
理解出来ないことを知る
レントゲンのない世界で
自分の背骨が
本当に真っ直ぐであるかを
認識できない恐怖に怯えながら
結局ぼくは
無理矢理に足を動かして
何も見えない前を進むしかない
悲しいことだけど
それはぼくが物理的に存在しなくなる
その日まで続くのだと
その都度気付かされるのだ

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