さしすせそ/小川 葉
 
いっしゅんこえがきこえた
そのとき
めがねのようにかけていた
さ、が
かなさんのひたいからおちた

あったわ!

きがついたときにはおそかった
さ、が
さか、にくっついて
さかさ、になると
せかいのすべてがひっくりかえり
はるかずじょうには
うみがうかんでいたのである

もうかえれない
うみをみあげながら
くものうえをあるいていると
な、がおちている
な、をひろったかなさんは
かなな、になった

かなにも
さかなにももどれない
かなな、は
ようせいのなまえだった


(し)

し、が
やってくる

つりばりのような
そのするどい
[次のページ]
戻る   Point(2)