さしすせそ/小川 葉
 
 
 
(さ)

さかなが
さ、のじをなくして
かなさんになってしまった

きしへあがったかなさんは
あうひとびとに
たずねるけれど
さ、なんてしらないなあ
きれいなひとだなあ
とこたえるばかり

このままでは
さかなに
もどれなくなってしまう
あわててはしりだす
かなさんのいくさきに
さかがあった

おじょうさん
な、をしりませんか?
わたしの
な、を

もはやみちのいちぶとなった
さかのこえなど
かなさんにはきこえない
さかもまた
な、をなくしてしまった
さかななのだった

しかしもともと
おたがいさかなだったせいか
いっ
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